ヘンプのリバーシブルコート

僕が気がついたときには、
うさぶろうさんは、もう、
そのコートを 羽織っていました。
 
 
青のコート。

リバーシブルで、

表地は、
薄く縦縞が入った、青と赤茶の色合い、

裏地(内側)は、
青茶色の横縞が斜めに入った、くっきりとした模様。

素材は、
ヘンプ100%。

細かく撚られた、細い糸が、
ぎっちりと織り込まれていて、
目の詰まった、生地。

その、色合い、柄、風合い。
豪華さ、贅沢さ、そして、存在感 …

展示会準備で、ハンガーに吊るした段階から、
意識を持って行かれる、服でした。
 
 
展示会最終日。

うさぶろうさんは、
お見えになると、いつものように、

まず、そこに居る、
お客さま、そして、関係者、全員に、
挨拶と、言葉の心配りをされ、

そして、
 「さぁ、今日は、どんな服が、来ているのかなぁ」
と、

その会場にある服を、
一通り、チェックされました。

そこから、
お客さま、ひとり一人に、

楽しく温かい言葉をかけながら、
コーディネートや、選択のアドバイスを、なさいます。

みなさん、
嬉しそうに、楽しそうに、
また、ときに驚き、納得しながら、
その、アドバイスをお聞きになり、

そして、それらも参考にされながら、
気に入った服を、購入されていました。
 
 
その場のお客さま、全員への対応が終わると、
うさぶろうさんは、
また、展示会場にある服全体を、
チェックなさっておいででした。

その間に、
そのときいらした、最後のお客さまの、会計も終わり、

まだ、お客さまは、数名、その場に残っておいででしたが、
うさぶろうさんの、アドバイスタイムは、一区切りしました。
 
  
どうやら、そのタイミングで、
あのコートを、羽織られたようでした。

気がついたときには、
そのコートを纏(まと)い、
そして、しばらく、外に出られて、
その辺りを、軽く、散歩されたようです。

戻って来られたとき、
会場には、
私たちと、うさぶろうさんと一緒に来られたスタッフなど、
内輪の関係者だけでした。
 
 
 「もう、ここは、関係者だけですか?
  じゃぁ、このコート、買います」

そう、おっしゃられて、
確か、財布を出されたんじゃなかったかと、記憶しています。

ご自分用に、購入されるとのことでした。

 「へぇ〜、そうかぁ。
  あのコートは、うさぶろうさんの元に行くんだぁ」

そのとき、
最初に頭に浮かんだ、想いです。
 
 
今回は、
僕らにとっては、はじめての主催うさと展で、

正直、開催前は、
気に入った服があれば、
お客さまよりも先に、購入してしまうつもりでした。

サポートしてくださった、すなべさんも、
 「コーディネーターさんの、特典ですものね」
と、
おっしゃってくださって、
開始前は、そんなつもりでいました。

ところが、
展示会準備で、服をハンガーに掛け、棚に並べていると、

 「いや、やはり、まず、お客さまに、お届けしよう。
  残ったものの中から、自分の分を探そう」

と、
自然、思えて来ました。

服、一着一着に触れながら、
一着一着、いろいろと考えて、飾っていくと、

 「まず、お客さまに見ていただき、触れていただき、
  そして、お客さまに、お届けしたい」

との想いが、
自然、湧いて来ていました。

会の最中に、
何度も、畳み直したり、飾り替えたりしていると、

その想いが、
深まって来ていました。

なので、
 「自分の分は、残ったものから」
 「開催中は、服に、『個人的な想い』を持たない・向けない」
と、
決めていました。

それを、
意思で、しているのではなく、
自然、そうなっていました。
 
 
なので、
うさぶろうさんが、買われるとおっしゃったとき、

ただ、
驚きというか、「そうなんだ」という想いが、
湧いて来ていました。

その時。

すかさず、間髪入れずに、
すなべさんが、口を開きました。

 「でも、そのコート、
  いたきさんが、気に入ってる … 」

その発言に、
僕が、ビックリしました。
 
 
確かに、
僕は、そのコートを、気に入っていました。
とても、気に入っていました。

とても素晴らしい、とても素敵なコートだなと、
思っていました。

それを手に取り、話題にし、
試着したことも、何度もあります。

でも、記憶している範囲では、
「買おうと思っている」とか、
言った覚えはありません。

というか、
 「買おう」「残っていたら、買おう」
とか、
はっきりとは、決めていませんでした。
想っていませんでした。

なのに、
すなべさんの口から出た、その発言。

それを聞いて、
僕が、逆に、

 「あぁ、僕、
  そんなに、気に入っているんだ。
  やっぱり、買うつもりなんだ」

と、思いました。

自分が、驚きました。
 
 
それを聞いた、うさぶろうさんは、
即座に、

 「それじゃあ、やめます」
と、
おっしゃいました。

 「いえいえ、どうぞ。」
僕も、
即座に、返します。

うさぶろうさん、
お客さまでは、ないかな?

だから、
「お客さま、優先」では、ないのかな?

でも、
「購入していただくことを、優先」と、
ただ、そう、感じていたので、

自然、
その言葉が、出ていました。
 
 
でも、
もう、うさぶろうさんは、
購入される気持ちは、無くなられたようでした。

 「それじゃぁ、僕が買って、プレゼントしましょうか?」

まぁ、冗談だったんでしょうけどね。
そうまで、おっしゃってくださいました。

いま思えば、
 「ぜひぜひ、お願いします!!」
って、
言っとけばよかったなぁ〜 ^^

でも、そうまで、おっしゃってくれて、
そのコートの購入を辞退され、

そして、購入機会を、
僕に、譲ってくださいました。

すなべさんの口を通して、
『宇宙が』、
僕に、そのコートの購入を、勧めてきました。

僕にとっては、
『うさぶろうさんが』、
そのコートを、僕が買うことを、勧めてくれました。

『僕にとっては』、
うさぶろうさんは、
そのために、来てくださいました。
 
 
 「買っていいんだよ」
 「着ていいんだよ」

宇宙が、
そのコートが、
言ってくれているようでした。

最終日が終わり、
まだ会場に、居てくれた時点で、

そのコートは、
僕の元に来てくれることが、確定しました。

いま、その子は、
僕の部屋の壁から、
僕を見つめてくれています。
 
 
以前、このブログで、
不思議な経緯(いきさつ)から、
一着の服が、僕の手元にやって来た話を書きました
(過去記事「 上賀茂神社 式年遷宮 」)。

そして、また今回、
今度は、うさぶろうさんとの間で、
同じことが、起こりました。

 「服は、作られた時から、誰のところに行くか、決まっている」
 「着るべき服には、巡り会える」

うさと展に行くと、
必ずと言っていいほど、耳にする言葉です。

前にも書きましたが、
別に、信じる必要は無いです。

それができる人は、
できるだけ多くの展示会に足を運ばれて、
できるだけ初日の、できるだけ早い時間に、行かれればいいと思います。

でも、
そうできない方も、大勢、いらっしゃいますよね。

そして、そういう方は、
どうしても、
こころに、焦りや不安が、湧いてしまいがちだと思います。

そんな方には、
ぜひ、
前回と、今回の、
僕の、具体的な事例と体験を、シェアさせていただきたいと思いました。

どうぞ、ご参考になさってください。
 
 
さて、ところで、
このコート、

最初に、どこに、着ていこうかなぁ?